東京・有明の東京ビッグサイトで3月8日まで開催中の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN 2024(フーデックス ジャパン2024)」にパビリオンを出展した欧州連合(EU)が、開催初日の3月5日に公式オープニングセレモニーを実施。駐日欧州連合代表部代表・大使のジャン=エリック・パケ閣下らのテープカットに加え、植木将仁シェフによるヨーロッパ産食材を用いたクッキングショーも行われ、4日間にわたる食の祭典の幕開けを盛大に祝った。ここでは、その式典の様子をレポート。パケ閣下や植木シェフらの言葉を通じて、ヨーロッパの自然が育む食の魅力を感じてほしい。
「It is the perfect match!/EUの食材が日本の食材と出合うとき」を合言葉に、日本とEUを食でつなぐ「パーフェクトマッチ」キャンペーンを展開している欧州連合(以下、EU)。その一環として出展が決まった今回のパビリオンでは、スペイン産やギリシャ産のチーズ、デンマーク産のジンジャービスケット、マルタ産のオリーブオイルなど、EU発の「原産地呼称保護(PDO)」「地理的表示保護(PGI)」「EU有機認証マーク」各制度の認証を受けた製品がふるまわれ、周囲に設けられたEU各国のパビリオンとともに大きな盛況を見せていた。
オープニングセレモニーでは、ジャン=エリック・パケ閣下が挨拶に立ち、初めに関係各所への感謝を伝えた上で次のように述べた。
「今日、日本とEUは他に例を見ないほど強い友情と信頼で結ばれた関係にあります。EUの人々は日本の食品が大好きですし、日本の方々にもEUの食品を広く好んでいただいております。先月には日本とEUのEPA(経済連携協定)の発効から5周年を迎え、両者の深い友好を改めて感じました。PGIについても認知が広がり、例えば昨年は大阪のワインが新たにPGIの認証を受けました。今回のフーデックスには、EUの27の加盟国から300点以上の選りすぐりのアイテムが出展されています。EU産のすばらしい食品と出逢える場になると思いますので、ぜひこの機会をお楽しみください」
続いて来賓として出席した農林水産省審議官の小川良介氏も挨拶。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて昨年で10年を迎えたこと、そしてヨーロッパにも同じく食の無形文化遺産が多数あることに触れた同氏は、「EUも日本もフードを単に栄養を摂るためのものではなく、カルチャーとして位置付けていることの証左」とした上で、「このフーデックスの機会を利用して、両方の食文化の交流が一層促進されることを願っています」と語った。
そしてパケ閣下と小川氏によるテープカットで全4日間の日程が開幕。出席者の乾杯の後、EU産食品を使ったささやかなフィンガーフードが提供され、しばし談笑の時間が設けられた。
この日はオープニングセレモニーに続いて、西麻布「AZUR et MASA UEKI」の植木将仁シェフによるクッキングショーも行われた。
石川県・金沢生まれの植木シェフは、日本各地の優れた食材をフランス料理の技法で調理する「和魂洋才」の革新的な一皿で、国内外から高い評価を受けている料理人だ。この日は「国産グリーンアスパラのグリル モッツァレラチーズの入ったタップナードとフランス産生ハム添え」をクッキング。日本のグリーンアスパラとEU産食材の協奏が織りなす、まさにパーフェクトマッチな一品を観衆の前で調理した。
キッチンに立った植木シェフは、佐賀県産のグリーンアスパラ、フランス・バイヨンヌ産の生ハム、同じくフランス産のオリーブタプナード、イタリア・カンパーナ地方産のモッツァレラチーズなどの材料を用意し、まず初めにポルトガル産エクストラオリーブオイルを敷いたグリルパンの上に、あらかじめ70度のスチームオーブンで20分ほど火にかけたグリーンアスパラを並べてグリル。
続いて取り出されたのはマルタ産のフレーク海塩。この塩を普段から愛用しているというシェフは、「マルタはシチリア島の南にある地中海の島国で、(シェフの故郷である石川県の)輪島と同じで塩田があり、そこで一年間かけて作られたのが、このフレーク海塩なんです。ミネラル分が少なくサクサクとしているんですが、肉でも野菜でも素材の味をものすごくグレードアップしてくれるので、僕は好んで使っています」と説明を加えながら、塩をひとつかみ。
しばらくしたところでグリルパンからアスパラを上げ、粗熱を取る間にタプナードソースを用意。「僕は90年代に南フランスのプロヴァンスで修行していたんですが、その時によくタプナードをマグロや子羊の料理に使っていました。非常に万能な調味料で、日本人の感覚で言うと、今だったら蕗味噌のような感じで、修行時代のことを思い出します」と自らのエピソードを披露しながらオリーブタプナードにイタリア・モデナ産のバルサミコ酢を合わせていく。
続いて「マルゲリータピザなどに使われるモッツァレラは、やはり水牛のチーズの方が味わいもよく、脂肪分が多くて栄養価も高いです」とカンパーナ地方産のモッツァレラチーズについて解説。さらに「アクセントとしてリコッタチーズを入れると、またひとつ味わいのあるソースになります」とプラスオンのアドバイスを差し込みながらチーズをダイス状にカットし、香り付けのオリーブオイルを少量加えてソースのできあがり。
「フランス料理というのは、その土地のテロワール(風土)が大事。ヌーベルキュイジーヌの先駆者といわれるフェルナン・ポワンの言葉に『料理人よ故郷に帰れ』という名言があるのですが、土地の素晴らしい郷土料理や素材を大切にする気持ちが僕はすごく大切だと思っています」
仕上げを前に自身のシェフ道にも通じるフランス料理の精神について、そう語った植木シェフ。そしてグリーンアスパラ、タプナードソース、静岡産のアメーラトマト、そして生ハムを巧みに盛り付け、最後にもう一度オリーブオイルをひとふりして見た目もおいしい一皿が完成した。
シェフの故郷、石川県の伝統工芸品である輪島塗の皿に盛り付けられた料理は、今年1月の地震で今も大きな被害を受ける能登半島への思いも伝わる一品に。完成した料理は観客に試食として配られ、パーフェクトマッチな味わいにほころぶ会場中の笑顔は、食でつながる日本とEUとの絆を至極端的に表していた。
華やかな幕開けで初日から盛況を見せていたEUパビリオン。なお、「パーフェクトマッチ」キャンペーンの特設ページでは、日本とEUの食材を融合させたパーフェクトマッチなレシピを多数紹介しているので、フーデックス期間中に会場を訪れることができなかったという方も、ぜひチェックしてみてほしい。
【EU「パーフェクトマッチ」キャンペーン特設ページ】
https://food-match-japan.campaign.europa.eu/ja
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